同窓会報No.38

2021 年 第 38 号 TUT 同窓会報 27 卒業生、ならびに修了生の皆様におかれましては、豊橋 技術科学大学で学ばれた知識を十分に活かして、各職場 においてご活躍のことと存じます。本稿では、辻研究室の 近況を報告いたします。現在、当研究室では、辻秀人教授 をはじめ、荒川優樹助教、以下、修士課程 4 名、および学 部生 6 名、計 12 名で活動しており、ポリ乳酸を中心とした 生分解性高分子材料および新規液晶材料の研究を行って います。ポリ乳酸は再生可能な植物資源より生産され、自 然環境内および生体内で加水分解される特性から、環境負 荷の少ない生分解性高分子材料として利用されています。 我々はポリマー設計、ブレンド、材料加工プロセスなどにより、 物理的特性および生分解特性の制御を目的とした研究を行 なっております。一方で、液晶とは、液体と結晶の中間状態 で、電磁場などによって分子の向きを好きなように操作する ことができるため、液晶ディスプレイなどに利用されています。 我々は液晶性を示す新しい有機分子材料の開発にも取り組 んでおります。以下に主な研究内容を示します。 ・鏡像異性高分子間のステレオコンプレックス結晶に関す る研究 ポリ乳酸のL 体とD体の間の相互作用はL 体間または D体間よりも強く、その結果として、ステレオコンプレックス 結晶を形成し、熱的特性や機械的特性などが向上します。 本研究では、ポリ乳酸をモデルポリマーとして、ステレオコ ンプレックス結晶を形成する新しい高分子材料の開発およ び物性評価に関する研究を行っています。 ・第16 族元素を導入した新規液晶分子の開発 炭素や酸素と比較して分極率が高く、屈折率が優れて いる硫黄やセレンなどの第16 族元素を導入して、液晶ディ スプレイ用フィルムを薄膜化できるような高複屈折性液晶分 子の設計・合成・特性評価を行っています。他にも、分子 が螺旋状に集合する液晶相などの新しい液晶材料の開発を 行っています。 本研究室の卒業生である山崎さんが卒業研究で取り組 んだ、乳酸とグリコール酸の交互共重合体の鏡像異性体に おけるステレオコンプレックス結晶の形成に関する論文とし てAmerican Chemical Society 発行のApplied Polymer Materialsに掲載されました。詳細につきましては下記のサ イトをご覧ください。 https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/acsapm.9b00232 また、卒業生である佐々木さんが卒業研究で取り組んだ、 硫黄を導入した新しい高複屈折性液晶材料に関する論文と してTaylor & Francis 社発行のLiquid Crystalsに掲載 されました。詳細につきましては下記のサイトをご覧ください。 https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/026782 92.2017.1385103 ご多忙とは存じますが、本学の近くにいらした際には是非 研究室に足を運んで頂き、いろいろな話をして頂ければと思 います。最後になりましたが、諸先輩方の更なるご活躍を研 究室一同、心よりご祈念致しております。 高分子材料工学研究室 博士前期課程2年 林 裕二

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