同窓会報No.38

退職教員より 20 2021 年 第 38 号 TUT 同窓会報 「言葉を理解するコンピュータを目指して」 情報メディア基盤センター/情報・知能工学系 教授 井佐原 均 訳を間違えるという傾向があります。これは機械翻訳を実 社会で使っていくためには大きな問題となります。この問 題を解決するために、本学のイノベーション協働研究プロ ジェクトの一つとして、企業と連携して機械翻訳の分野適 応の研究を進めました。今はその延長として、知の拠点あ いちのプロジェクトを進めています。このような機械翻訳 システムの実用化研究に対して、平成 31 年度科学技術分 野の文部科学大臣表彰・科学技術賞をいただきました。 シニアの研究者としての役割の一つとして、研究分野へ の貢献があります。本学に勤務した間にも国際会議の誘致 を積極的に進めました。たとえば、2018 年 5 月には我々の 分野の最大の国際会議の一つであるLREC2018をはじめ てヨーロッパ外に誘致し、宮崎で開催しました。その 9 月 には高松でAPCLC2018という少し文系よりの国際会議も 開催しました。APCLC2018 では瀬戸大橋に登る、自分で うどんを作ってランチにする、レトロ電車を貸し切って走 らせる、といったユニークなエクスカージョンを行い、国内 外からの参加者に大いに喜んでいただきました。 私たち人間は知的活動の多くの部分を言葉によって行 っています。その言葉に興味を持ち研究を行ってきました。 定年を迎えますが、今しばらく研究を続けていく予定です。 2010 年に本学に教授として着任し、10 年にわたって、 情報メディア基盤センターの副センター長・センター長と して過ごしました。大学を出て、最初の職場は茨城県の筑 波研究学園都市にある通商産業省工業技術院電子技術 総合研究所(現在の産業技術総合研究所)で、その後、 郵政省通信総合研究所(現在の情報通信研究機構)に異 動しました。その間、神戸大学の連携講座の教員を併任 するなど、博士課程の学生の指導などはしていましたが、 国立研究所の研究者としての期間が長く、教員経験は10 年ほどとなります。つたない教員であったろうと思います が、皆様のご理解とご支援で無事定年を迎えることができ ました。心から感謝いたします。 私の研究分野は自然言語処理といって、コンピュータに 言葉を理解させようとする研究で、人工知能研究の一分 野です。その中でも機械翻訳に関する研究をしています。 最近ではニューラル機械翻訳という人工知能型の機械翻 訳システムが実用化され、普通の文であれば、普通の人 間よりもうまく翻訳できるようになってきました。とはいえ、 今の機械翻訳は一般常識や文脈を使わずに、1文ごとに翻 訳していきますので、知識や推論が必要な場面では人間 の翻訳者にはかないません。また固有名詞や珍しい単語の 恒例のおでんしゃ貸し切り センタースタッフや、本学の先生方や、研究室の学生や、海外からの教員や学生たち。

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