同窓会報No.37

2018 年 3月 平成 29 年度卒業式・修了式(アイ・プラザ豊橋)にて 18 2020 年 第 37 号 TUT 同窓会報 退職教員より 「化学と数学とコンピュータ」 情報・知能工学系 教授  高橋 由雅 研助手)との出会いが、現在のケモインフォマティクスそ して化学人工知能研究への入り口となりました。宮下先生 が N.J.Nilsson 著「Learning Machine」をテキストにアフ ターファイブの自主勉強会を開催し、これに筆者を含む数 名の居候(研究生)が参加しました。輪講形式のものでし た。宮下先生は東北大理学部物理化学の出身で数学が得 意であったこともあり、当番の担当者はそこに出てくる式 の誘導も含め、参加者全員が理解できるまで説明が求め られるなど予習も大変でしたが、これが後の研究生活の大 きな礎となりました。 その後、昭和 56 年 8 月、当時発足したばかりの分析計 測センターに助手として採用され、知識情報工学系の新 設に伴い、分子情報工学講座の講師として自身の研究室 を構えることになりました。以来、「分子情報システム研究 室」なる看板の下、化学関連分野におけるより高度なコン ピュータ利用技術の確立を目指し、主に化学構造情報の 計算機処理のためのアルゴリズムやシステム化に関する 様々な研究を基礎・応用の両面から進めてきました。この 間、佐々木先生を始めとする優れた共同研究者や多くの優 秀な学生・研究生に恵まれ、大学人として最後まで充実し た教育・研究生活を送ることができました。また、37 年あ まりに及ぶこれまでの教員生活を無事勤め上げられたの も多くの優秀な事務職員、技術職員の方々の支えがあって こそであり、すべての皆さま心から感謝申し上げます。あ りがとうございました。 表題の「化学と数学とコンピュータ」は様々な機会で研 究室紹介のために示してきたキーワードで、化学およびそ の関連分野のデータ解析や情報処理のための道具として の数学やアルゴリズム、実験手段としてのソフトウェアな どコンピュータ利用技術を象徴したものです。化合物分子 の様々な特性は化学構造の関数と見なすことができます。 また、化合物の構造情報は原子を点、結合を辺に対応づ ければグラフ理論でいうグラフと見なすことができます。 (特に、化学構造式をグラフ表現したものを分子グラフと 呼ぶ)グラフは数学的なオブジェクトであり、数学的な操 作が可能です。例えば、グラフの代数表現として、行列表 現を用いれば種々の行列演算も可能となります。そこから 導出される種々の数学量もまた化学構造の関数と見なす ことができます。このことは、化合物を光学フィルターのか わりに数学的フィルター(あるいはソフトウェアフィルター) を通して眺めることにより、亀の甲だけを眺めていたら見 えない新たな知識の発見にも繋がります。 筆者は山梨大学の大学院修士課程を修了後、縁あって 佐々木愼一 先生(本学 3 代目学長。当時、宮城教育大 学理科研究施設教授)のグループに研究生として参加し たのが今日の研究生活に至るきっかけとなりました。当時、 佐々木研では質量スペクトルやNMRスペクトルデータか らコンピュータを使って有機化合物の自動構造推定シス テムの開発研究を進め、国内の化学・製薬企業からも多く の研究者が研究生として参加していました。また、後に本 学助教授を務められた故 宮下芳勝 先生(当時、佐々木

RkJQdWJsaXNoZXIy NDY3NTA=