同窓会報 No.36 2019
8 2019 年 第 36 号 TUT 同窓会報 退職教員より 「私の研究者人生」 寺嶋 一彦 加え、メカトロシステム分野の搬送制御・振動制御、ロボ ット制御の研究を開始しました。ロボットでは、多指多関 節ハンド・冗長アームや全方向移動ビークルの研究を出発 に、介護、リハビリ、サービスロボットなど知能ロボットの 研究と共に、人間・ロボット共生リサーチセンターを平成 22 年に立ち上げ、人間とロボットの共生システムの研究に 取り組みました。色々な応用分野の制御を行い、それを理 論体系にフィードバックし、制御の理論構築と応用の研究 に没頭できました。 振り返ると、学術論文 450 編(解説論文、審査付国際 会議論文も含む)、著書 10 数編、特許 60 数件が掲載され、 また、1 年間の海外留学(ミュンヘン工科大学)と国際会 議での論文発表のために 77 回の海外出張(延べ 2 年)を 経験しました。自分の研究の主張を世の中に向かって自由 にできるのは、大学研究者に与えられた特典です。さらに 300 人以上の研究室卒業生、20 数名の博士取得者、10 数 名の大学・高専など教育機関への研究者を輩出できたの も、周りの方に恵まれたお蔭です。 一昔前は、人生 50 年という言葉もありましたが、今は、 人生 100 年時代と言われるようになりました。今後も、や りたいことを思う存分追求し、" いつでも夢を " 持った人生 を送りたく思います。最後になりますが、今までお世話に なった皆様への深い感謝、御礼と共に、皆様のご多幸を お祈り申しあげます。 時の経つのは早いものです。昭和57 年に京都から豊橋 技科大に赴任して37年が経過。高校時代にアポロ宇宙船 の月着陸に感激し、大学では機械工学を専攻。学部 3 年 時にシステム制御理論という学問と運命の出会いを。制御 理論の数学的証明や計算を毎日毎日飽きずにしていた頃 を懐かしく思い出します。狭くて深い範囲でしたが、シス テムの考え方や哲学を学べ、研究者としての土台を築けま した。そろそろ制御の応用もしたいと考えた時に、突然本 学からお声がかかった次第です。 赴任した本学の工程制御研究室では、元トヨタ自動車 ㈱部長であった教授の坂野武男先生が機械工学(鋳造分 野)専門、野村宏之先生が金属工学専門、そして私が制 御工学専門ということで、まさに異分野融合の組織でし た。砂型鋳造のトータルシステムのプロセス解析、モデリ ングと制御の研究が研究室のテーマで新鮮な気持ちで取 り組めました。" 砂は生きている"という言葉もあり、極め て難しい現象でしたが、シミュレーション解析と実験を並 行して研究を進め、うまく実証した時には感激したもので す。学生は、技術に熱心で、実験のうまさ、技術力の高さ には驚きましたが、一緒によく勉強、議論し、時には遊び もしました。若い学生と一緒に研究するのは素晴らしいこ とです。 それから12 年たち教授に。自分で新たな研究分野を切 り開く時期になりました。鋳造プロセス分野の最適制御に
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