同窓会報No.38

退職教員より 4 2021 年 第 38 号 TUT 同窓会報 「本学一筋 天伯での35年に感謝」 機械工学系 教授 福本 昌宏 しました。昨今、国内大手自動車メーカーのエンジンシリ ンダボア内面およびエネルギー関連企業のNAS 電池金 属層創製における溶射皮膜が、遷移温度の概念を基に品 質保証されており、技術の社会実装化を果たすことがで きました。光栄なことです。 他方、社会的活動として、岡根先生の後継となる中部 支部長を皮切りに日本溶射学会第 8 代会長として 6 年間 指揮を執らせて頂きました。この間、一般社団法人化、日 本溶射工業会との連携、高温学会との活動統合、アジア 溶射会議の主宰・設置などを通し、国内外に亘る当該分 野の基盤構築に力を尽くしました。 平成 14 年、地球環境負荷低減の社会的要請に応える テーマとして新たに摩擦攪拌援用異材接合技術開発に 着手しました。上記表面創成に加え、バルク状異材界面 創成への取り組みです。同年研究室スタッフに迎えた安 井 利明准教授を中心に今日まで推進して参りました。既 存溶融溶接では困難であった異種金属間界面反応の制 御化を端緒に、確立した異材接合における新指導原理を 駆使し、昨今では異種金属間、さらにはCFRPを含む異 種材料間のマルチマテリアル化において着実に成果を上 げつつあり、更なる発展、社会実装化が期待されます。 ここに至る道程において、研究室在籍の延べ 250 名を 超える博士・修士課程修了生、学部卒業生のたゆみなき 学位取得後、本学開学 に数年遅れで新設された 岡根 功教授研究室の助 手として、昭和 59 年 6 月 に本学に赴任しました。当 時、恩師から紹介された “新構想の”国立大学“、技 術科学”大学の響きが新 鮮で、2 ヶ月早く同年 4 月 に赴任された先生の部屋をノックし、大学教員としての 生活に入りました。 材料・加工・生産計画の 3 大講座から成る生産システ ム工学系加工学講座の中にあって研究室の担当は接合 加工分野であり、従来にない斬新な路線の開拓が基本理 念だと聞かされました。取組みの方向性を模索した 3 年 目初頭に先生から「将来に向けた主テーマとして拡散接 合または表面改質のどちらかに決めてはどうか」との示 唆を頂きました。熟慮の末、学位研究テーマとした高温 疲労破壊が材料の表面に起因することから、表面改質、 とりわけ粒子積層による膜創成 / 溶射法に関する研究活 動へと舵を切りました。“解析”機械工学である材料強度 学から“設計”機械工学に位置づけられる材料加工学へ の転身です。結果的にこれがライフワークとなりました。 数年の下積みを経て徐々に科研費等も獲得できるよう になり、また、平成元年に機会を頂いた文部省在外研究 員としての留学を契機に、当該分野における国内外最先 端の研究者との交流が始まりました。帰国後、加工学研 究の真髄が対象プロセスの“制御性確立”にあると見切 り、国内外に先駆けて皮膜形成の基本要素である単一溶 射粒子の偏平挙動解析に着手しました。この着想が奏功 し平成 5 年に、粒子偏平形態が遷移的に変化する基材温 度の特異点 : 遷移温度Ttを見出しました。また遷移温度 に呼応し皮膜特性が遷移的に変化する事実(図参照)か ら、遷移温度を溶射プロセス制御指針として定義・提唱

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