同窓会報 No.36 2019

24 2019 年 第 36 号 TUT 同窓会報 2018 年 4 月に着任しました佐藤幸紀です。専門は計算機アーキテクチャで、東 北大学で博士の学位を取得後、ファブレス半導体設計ベンチャー企業、北陸先端 科学技術大学院大学、東京工業大学にて計算機システムの理論から応用、実装、 実運用に渡り幅広く研究開発を行ってまいりました。本学の情報・知能工学系では 計算機システム性能工学研究室を主宰し、スーパーコンピュータからモバイル機器・ 組み込み機器に至るまでのあらゆる計算機システムを対象に見据えて、それらの計 算性能を科学的に分析・推定・改善していく手法の研究開発を進めております。近 年の人工知能技術の中核をなす深層学習処理においては現状のCPU/GPU 技術だ けでは計算性能がまだまだ足りていないといわれております。すなわち、今後期待されている人工知能技術に駆動される 未来の超スマート社会を実現する上では計算機システムの性能不足問題の解決は急務であり、高性能で高効率な計算機シ ステムを実現する技術は自動運転や知的ロボットなどの新しい応用に向けて鍵(Enabler)となる技術として高い期待を集 めています。 このような技術動向の下、性能不足の問題を解決する糸口はソフトウェアのメモリ参照局所性を的確にハードウェアの特 性にカスタマイズすることとの着想の下、高性能計算、プログラミング、ソフトウェア、アーキテクチャ、ハードウェア設計といっ た関連分野の英知を結集し、①メモリシステムを中心としたカスタム化やコデザイン、②システムレベルでの性能品質の科 学的モデリング、③数理最適化や深層学習によるカスタマイズの自動化についての研究を行い、計算機システムの処理性 能効率や実現コストの改善を追求しようと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。 情報・知能工学系 准教授  佐藤 幸紀 2017 年 11月にテニュアトラック准教授として着任しました松井淑恵です。専門は 聴覚心理学・音楽心理学で、聴覚末梢のはたらきを計算モデルとして表現するため の基礎心理実験から、音楽の知覚認知実験まで、音に関連する知覚認知を幅広く 扱っています。 修士課程までは、京都市立芸術大学でピアノ演奏を専攻しておりました。それが なぜ技科大へ !? と初対面の方には必ず驚かれます。当初は演奏者として音楽心理 学という分野を知り、いま自分がここで弾き、聞いている音が、どのようにして「音 楽」として受容されるのか知りたいと思うようになりました。ところが、専門書や論 文を読んでみると、個々の音のピッチの知覚すら決定版モデルと呼べるものはなかったのです。音楽が聞こえてくる、とい うことは、音のピッチや大きさに始まり、同時に存在する音の関係であるハーモニー、音の時間軸の関係であるリズムなど、 さまざまな要素の知覚認知とその統合の上に成り立ちます。楽譜の上の音符より「今ここで感じる音楽」に興味があった私は、 聴知覚の入り口である聴覚末梢のモデル化の研究に関わるようになりました。現在は音楽だけではなく、学生と一緒に模擬 難聴や音声の感情の知覚に関する研究も行っています。とくに模擬難聴研究は、高齢化社会におけるコミュニケーションの 一助になればと願って多くの共同研究者と進めています。 着任から1 年がたった今でも、理系教員としてはまだまだ初心者同然で、周りの先生方、事務の方々、学生のおかげで なんとか走り続けられている状態です。本学の多様な研究分野にさらに面白い研究を追加すべく努力して参りますので、ど うぞよろしくお願いいたします。 情報・知能工学系 准教授  松井 淑恵

RkJQdWJsaXNoZXIy NDY3NTA=