同窓会報 No.36 2019

22 2019 年 第 36 号 TUT 同窓会報 退職教員より 「少年老い易く学成り難し」 情報・知能工学系 名誉教授 増山 繁 により新たに出現してきた問題に重点を置いて研究してき ました。問題のもつ構造を解明し、それを活用して効率の 良いアルゴリズムを設計することを主な研究方針としてき ました。研究生活全体において115 編の査読付き学術雑 誌論文(解説等を除く)、それとの重複を省き、44 編の国 際会議論文を公表できました。 お陰様で 110 名近くの優秀でやる気のある学生を指導 することができました。上記、研究成果の大半は彼らが在 学中の共同研究によるものです。博士課程まで進学したも のも十数名に達し、名古屋学院大、徳島大、長岡技科大、 岡山理科大、NTT 研究所、情報通信研究機構、釧路高 専(論文博士)、成蹊大、広島工業大、LINE、サイバー エージェント、東大、日立製作所、理研革新知能統合研 究センター、鳥羽商船高専等で、大いに活躍しています。 目の前の問題に追われ夢中で過ごす間に 29 年間経ち、 平成の終わりを目前に定年を迎えるのは感慨深いです。浅 学菲才の身、未だ分からないことばかりで、多くの研究課 題をやり残しており、好奇心衰えず、気分は青年ですので、 定年後も地道に研究、教育に精進していくつもりです。 末筆ですが、優秀で、熱心にサポート頂いた歴代の秘 書、系事務室・全学共通事務官の皆様に深謝の意を表す るとともに、本学の益々の発展と皆さまのご多幸を衷心よ り祈念して筆を置きます。 平成元年 4 月、新設間もない知識情報工学系に着任し ました。系の建物は建設中で技術開発センターの2階に間 借りしていました。周りは一面のキャベツ、白菜、スイカ 畑で、冬は強風で計算機に砂が入る、そんな環境でした が、1 期生は特に進取の気性に富んでいて大変印象深か ったです。写真は旧知識情報工学課程卒業 20 周年記念 クラス会で集まった1 期生の集合写真です。 講師以上は独立した研究室を持つという初代系長  佐々木愼一先生(第 3 代学長)の方針で、従前同様、自 由に研究でき、「流行を追うのではなく、流行を作り出そ う!」をモットーに研究を続けてきました。以前からのテー マ、グラフ・ネットワークを対象とした離散最適化に加え、 学生の強い希望があり、元々興味のあった自然言語処理 の研究を開始しました。まず、テキスト自動要約の研究に 取り組み、この分野で草分けの研究室の一つです。 爾来、一貫して、意味的表現の研究、特に交通事故、景 気動向原因表現、その発展として因果関係を表す表現の 抽出とその特許分析への応用等を主に研究してきました。 「大雨によって鉄道が不通になった。」が因果関係を表すこ とが分かるのは、「・・・によって」という原因を表す表現が あるからです。そこに着目して、まず、因果関係を表す同 様の表現(手がかり表現)を集め、更に、因果関係を表す 表現パターンが、基本パターン「原因+手がかり表現+結 果」を基本形とし、そのバリエーションを含め、5 つに分 類されることを解明しました。また、文がどの分類に属す るかの自動判定法の確立に成功しました。自然言語処理は 計算機性能とメモリ集積度の目を見張るような発展、イン ターネットの爆発的な普及、Google の急激な成長と相まっ て、現在AI(人工知能)の中心技術の一つとして脚光を 浴びており、隔世の感があります。グラフ・ネットワークを 対象とした離散最適化においては、通信網、電力網、交通 網、鉄道・野球試合スケジューリングなどの離散的構造を 持つ最適化問題を対象に研究してきました。特に、インタ ーネット、移動体通信、AGV( 自動搬送車 ) の急激な発展

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